私が、自分のリビングで、気に入っているものは、数年かけて集めたシルクスクリーンや絵画・銅版画などである。


ほとんどが、はがき大のもので、ランダムに壁に配置している。


その中でも、一番のお気に入りは、J・コクトーのリトポスターである。

これは、結構、大きい。

額に入れて、床に置いてある。


リビングの顔になる絵が欲しくて、ずいぶん、探し回った。


私は、20世紀絵画が好きなので、マティス、カンディンスキー、タピエス、と、好きな画家の作品を選ぶと、どうしても、部屋全体の印象が重くなる。


イメージは白。

鉛筆で走り書きをしたような大判の作品が欲しかった。

コクトーは、当然、念頭にあったが、オンラインショップも、まだ、発達していない頃、見つけることができなかった。


偶然、コクトーのリトポスターを目にしたのは、パートナーと初めて、パリに行った時。

裏通りの小さな画廊でである。

頑固そうなおじいさんを相手に、フランス語と英語をちゃんぽんにして、値切り倒したのも、今、思えば、いい思い出である。


コクトーのリトポスター


思い出がお気に入りなのか? ポスターがお気に入りなのか?

難しいところではあるが、人間、そんなに割り切って生きられるものでもない。


インテリアの一つ、一つに、エピソードがある。

部屋は、思い出で形作られていると言ってもよい。

このポスターは、リビングの中で、私に、最も、上質な思い出を提供してくれる。そして、飽きずに、美しい。


リビングの中で、一番のお気にいりは何かと聞かれれば、はるかパリの街角で、やっと、探し当てた、この一枚のリトポスターをあげる。